砕けた心を

女は、砕けた心の破片を拾い直し
その欠片をツギハギして
ランプシェードを作った

そのランプシェードに初めてスイッチを入れた時
傍には夜の樹と埃の積もった冒険者の本とだけがあった

女はまるで路頭に迷いゴミを漁る老婆だった

ランプシェードは走馬灯のように回る仕掛けが施してあり
光という魂がつくとカラカラと回り
女の粗末な部屋の壁に影絵を作った

それは万華鏡の中で小人になって踊る
ちいさなフェスティバルのようだった

キラキラと光るのは
痛みの中で砕けた青春や愛の祈り

煙るのは夢現のあわいを消す魔女の指

地中に餓鬼がバッタのように飛び交い
その気配の中で、
盲しいた水晶窟(すいしょうくつ)で聴いた水音の千年よ

地の底から続く洞穴の旅と
湖を呼ぶ太陽の甘い囁き
問わず語りの千夜一夜

カラカラ・・・
カラカラ・・・
とランプシェードが回るたびに
女は若返った

ランプシェードの明滅する紙芝居の周りには
さまざまな生き物が寄ってきた
ランプシェードはりんごの樹だったかもしれない

時は流れた

嘆きの谷は呪符を破り
羽に抱かれフワリ
グラウンド・ゼロの靴紐への挨拶をした

太陽に灼かれて
病は消毒され、カビは滅され、
裏切りも悲嘆も海辺のちっちゃな女の子のように甲羅干しする
あぁ、そうあれ!

慰めの愛撫は何よりも
あの太陽の口付けとあなたの笑顔だ

あなたはあなたの大きなリュックに手をまさぐり、考えながら、
慎重に女にやるものを采配している

女はふ、と、
まごころ、という言葉を思い出す

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