勇気を出して、ようやく聞けた彼のメアド
でも 何を話せばいいかわからなくて、
本文メッセージ、まだ空っぽのまま。
“メアドありがとう!
いっぱい話したいな♪”
――悩みに悩んで、やっと書けた文はこれだけ。
「これじゃ聞いた意味ない」って、心で溜息ついた。
けれどこの他愛ない言葉で、彼の言葉が返ってくるなら
勇気を出して
送信ボタン押せるの
いつもクールで、近づきがたいキミだから
話したことなんて、指で数えられるくらいしかない。
でもときたま見せてくれるあの笑顔が大好きだから
私は、頑張れる。
震えたケータイの液晶に映ったのは、
メールのアイコンと、キミの名前。
高鳴る胸を抑えながら、メールを開く。
タイトルは、“Re.”
タイトルに無頓着なのが、彼らしいと微笑んでみたり。
本文は、
“メールありがとな。
俺でよければ話し相手になるよ”
その、一言。
…でもなんでだろう。
嬉しすぎて、震えてくるの。
彼の言葉が私だけに向けられているからなのか、
話し相手になる、って言葉が聞けたからなのか。
わからない、わからないけど、
胸が高鳴って、トマラナイ。
その文を何度も読み返して、無意識に顔が綻んで。
胸が、あふれ出した幸せで満ちていく。
――指は、また動き始める。
彼のこと知りたくて
なんでもないこと聞いてみた。
好きな歌手とか、好きなテレビ番組とか。
いつか、本当の質問が聞けるまで。
私は、逡巡しながら指を迷走させる。
いつか送信したい、この気持ち。
この、あふれ出る「すき」の気持ち。
どうか届くそのときまで
小さな勇気を、
その無表情な言葉で、
私に与え続けてください。
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