幼い少年の時

「……で、**さん?用件とやらは何なんだい?」

嗚呼
一体何なのだろう
何故俺はもうちょっとマシな応対が
この人相手には出来ないのか

そして この人は何を思って
俺を 誰も居ない裏門まで呼び出したのか

「これ。開けて読んでみて」

なんだよ 手紙まで寄越して
伝えたいことがあるなら
ここには俺たちしか居ないのだから
口で言えばいいのでは

…ふと 思いとどまる
相手の顔色を窺う

その瞬間

この人が何を伝えたいのか
何を手紙に書いたのか
全部判ってしまった
自意識過剰とも言えるが
そうではないことを 直感で確信した

確認するために 封を切る
……やはり そうだった
それには ただ一言 こうあった

『好きです』
このあとに消しゴムで消した跡があった

顔を上げて 相手と目線を合わせる
自分でも判るくらいに すっとぼけた顔をした
するとその人は 恥ずかしそうに目を反らした

「…そこにあることが全て」

その人はこう言った
俺は いや絶対違うだろと考えたが
その人は何も言わなかった

そこでふと 思う
誰かに惚れるって どんな気分なんだろう
……少なくとも今の俺には

全くと言っていい程 判る気がしなかった

俺は軽く礼を言い
その場を立ち去った

この話に返事をしたのは
この時からおよそ4年が経ったときである
その間 俺とその人は
ほとんど口を聞かなかった


コメント

  1. 時間軸的には「本気」からかなり前の話
    面白くないですねごめんなさい