この街の2月に降る雨は
ほんの少し潮気を帯びて
雪になって積もることもなく
すり抜けて排水溝に流れ落ちる
思い出した砂の味のような
垂れ流した感情のようで
もしも、去年の春に降っていたら
誰かの花を咲かせられたのかな?
ようやく気付く、やがて忘れる
それでも傷付く、だけど求める
季節外れの鳳仙花なんて
ありもしないのにと笑う
その棘をひとつまたひとつ
抜くことが叶わないなら
抜け殻でも構わないから
いっそ抱きしめて痛みを負おう
その瞳を閉じそうになるけど
左の瞼だけは下げないで
見つめなくても構わないから
きつく抱きしめて痛みごと覆う
この街の2月に降る雨は
ほんの少し潮気を帯びて
深くて浅い傷口に沁み込んで
重ねた痛みだけを残していく
崩れかけた砂の城のような
泣き出した表情のようで
もしも、去年の春に降っていたら
誰かの花を咲かせられたのかな?