思い出はいい事しか残ってくれなくて。
貴方のことすべて覚えていたい私にはつらすぎる。
誰も私に触らないで。
記憶を思い出に変えないで。
胸に刻み込まれた恋の数。
付き合った人はそれこそ星の数かも。
けどね・・・。
本当に大切だって思ったのはあんたしかいないの。
はじめてすきって言いたくなったとき。
あんたはそれを見透かしてて、意地悪く口の端あげてこういったね。
「素直になれよ。俺の事好きだろ?」
私は何年かぶりに顔をトマトみたいに赤くしてあんたを睨んだ。
「あんた最悪。」
君は好意を持って近づいてくる人を片っ端からはねのけて。思えば私を選んでくれた。
それに気づいてて、あんたに笑いかけてた私は、卑怯者なのかもね。
綺麗で綺麗で、なんでそんなに綺麗なの。
そっちが好きかとか言い合いになったときに出る言葉はいつもおなじ。
「酷いのに、性格悪いくせにそんな顔するだけで全部持ってくなんて酷い。あんたの顔、絶対犯罪だよ。」
私がそういうとあんたは珍しく顔を歪めてこう言った。
「おたがいさまだろ。」
どんなに憎まれ口叩いても確かに愛はそこにあったはずなのに。
重ねあった唇の温度は確かにそこにあるのに。
もういないなんて嘘でしょ。
途中で死んじゃうなんて酷い。
置いて行っちゃうなんて卑怯。
こんなに好きなのに。
私に永遠の愛を誓わせておいて一人だけ先に行っちゃうなんてやっぱりあんた最悪。
最後に交わした言葉、まだ私覚えてるよ。
「明日の弁当たこさんウインナーね。」
「は?私が?てかたこさんウインナーって何?」
あの後、家に帰ってから、母さんに作り方を教えてもらってちゃんと作って、机の上においてあったのに。
なんでいなくなっちゃうの?
冷めてしまったお弁当も、私の記憶もまだそこで止まっているのに。
一周忌?
行きたくない。行きたくない。
泣いてる顔が一番可愛いとか、くだらないおしゃべりしてたあんたはどこに行ったの?
憶えてないの。
あんまり平凡だったから。
貴方との時間、全部覚えてられなかったの。
貴方が好きだった桃の花、理由分かったよ。
あんたの精一杯の愛情表現、分かってあげられなくってごめん。
あの花、私の誕生花だったんだね。
くれた指輪についてた文字も、私のイニシャルと貴方のイニシャルをつなげたもの。
ねえ、あんたの分まで、生きるから、生まれ変わったらまた恋人になろう?
生まれかわったら、幸せになろう?
約束。ね?
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