私がいない

何かがあった
誰かがいた
あの日確かにここにいた
あれは私

ぼんやりとした前景に
雨が染み込んで
空を見上げる私の
頬にポロリ
思い出が冷たく伝った

何もなかった
誰もいなかった
あの日私はどこにいたんだろう

はっきりとした背景に
雨が追いかけてきて
端っこにおいた
自信
ポロポロと崩れた

そう
私はあの日もどの日もいつの日も
誰の目にも留まらずに
生きていた

橋から見た夕焼けも
路地裏の猫も
あなたは覚えていない

私が覚えていたらそれでいいのかな?

声が出にくいほど胸が苦しい

でもここにいると決めた
あなたが私を忘れても
心に傷を付けたくないから