瞬間の味

『俺のアダプターの先っちょにある二つの棒が、奴の穴に差し込まれると、俺の体内からパワフルなエネルギーが生まれる。発熱と発汗。脂汗でギトギトになった俺はこのまま火を生むかと思われたが、それを恐れたニンゲンが奴の穴から俺を解放したので俺は放熱し萎え始め、程よい疲れとともに強い緊張から緩み始め、そこには俺の通電した記憶と目的のために利用された結果としての記録だけが残った』

きっと機械は機械なりの言葉で喋っているし、ありとあらゆるものは私たち人間とは違う言語で、やり方で、病み、痛み、苦しみ、歪み、歪みを正す自発性を持つに至って、必要とされること、依存することによって動きを手に入れるものもあろうが、それが直ちに目に見えないからと言って、それが無きものと言えるだろうか? 愛、愛、愛。世界は、愛で出来ている。愛のリアクション。リアクションによってそれが、分かる。何度でも見せて、聞かせて。統合神なき世界におけるパーツパーツが見せる、その時その瞬間だけのメッセージ。世界は明日急に、私の思い通りにはならない。何度も譲り合い、殺し合いさえ繰り返して、現実は常にそこに一つの形となって現れる。貴方と私と、あらゆるものが作り上げる現実という瞬間瞬間の芸術作品。そしてそこにはいつも、その時だけする味がありました。私たちはこの世界に入り、次の扉を開けては味を確認し、次の扉を開けてはまた違う味を確認する。古ぼけた埃の中にいて染み付いて離れない、その人だけが持つ味。貴方が私とまた出会う日には、私はきっと違う味になっていることでしょう。


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