異次元

長身の黒人ひとり異次元に通じる穴のようにたたずむ

触れたものが黄金になる王様を時おり思いあわれに思う

地下鉄で男のカバンが二度三度オレのケツに触れ憎しみを抱く

菓子パンがパンを失いビニールがベッドの上につくる陰影

店長と喧嘩し辞めた織田さんのロッカーの中の油性マジック

行間に鳴いているのが秋の虫 花火が一つの詩であるとして

眠ってる赤子に青のミニカーを握らせ思い直して奪う

上腕に上腕二頭筋はあり君は言い訳せず生きたまえ

年齢がだんだん重くなってくる 三十三 見つめても減らない

「がんばろう東北」雨のトラックにはねとばされた水避けきれず

完全な球を目指して寝る猫の耳が少々はみだしている

自転車の横転による自転車の横転によりごっちゃごちゃごちゃ

あらかじめパンの内部に仕込まれたマーガリンまるで心のように

「おい見ろよ、こいつ卒業文集をもらってすぐに切り刻んでる」

糞ひれば力作だったすぐに写メ真横から写メ少し味みる

どう生きてゆきたいのかだ回り終え独楽は再び紐を巻かれる

音楽を背負った人が乗ってきてしばらく経ってしずかに降りた

太陽が泣いてるマークがあるとしてそんな天気にふさわしい風


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