独りっきりの部屋の中。
また自分の手を切った。
毒リンゴみたいなおいしそうな
いろんな赤が混じった色、
なんとなくくわえてみる。
鉄の味。
あたりまえか。
急いで絆創膏をはる。
今月で7回目。
たくさんの絆創膏を貼った手は醜くて、
思わずあなたの手と比べてしまう。
細くて綺麗なガラス細工みたいな指、
氷みたいになぜかいつも冷たい手、
傷一つついていなくて少しゴツゴツしてるけど、
あたしの手なんかよりもずっと綺麗で
強く握れもすれば、
簡単に壊れちゃいそうで
その手でいつもあたしを励ましてくれる。
あの時も、
冷たい手であたしの赤いほっぺを
何度も撫でてくれて
『またね』
そうやって笑顔で遠くに行ってしまった。
視界がにじんでくる。
涙が傷だらけの手に落ちる。
『泣かないでよ』
あの日の困ったような声が聞こえた気がして
あたしの傷だらけの手で
何度も何度もぬぐう。
でもあなたの綺麗な手とは違って
傷に少し染みて、
それが地味に痛くて、
その痛みが変に心地よくてまた泣いた。
『大好きだよ、だから泣かないで』
また、あなたの
今度は泣きそうな声が聞こえた気がした。
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