悪魔と呼ばれた英雄

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星を守る英雄は
星の住人に責められて
それでもなお彼らの事を守ろうと
どんな時にも戦い続けた

星を守る英雄は
住人からこう呼ばれた
我らを滅ぼす悪魔だと
それでもなお英雄は
彼らの為に戦い続けた

何故(なにゆえ)人は気付かぬのかと
嘆く事さえしなかった
たとえ悪魔と罵られても
人がそれで楽になるなら良いのだと
英雄は笑顔を向けるのだった

やがて英雄の務めも終わり
星の住人のもとから消えた
すると星は洪水の後に枯れ果てて
みるみるうちに死の星となり果てた

ああ英雄よ
我らの為にもう一度
その務めを果たしておくれ
住人みんながそう言うと
かつての英雄は笑って言った

おお住人よ
我らを悪魔と罵りながら
星から消したその罪を
償うつもりはないのかと
悪魔のもとで笑って言った

***

ここ数日、スギ花粉がピークを迎えているらしい。
そのスギ花粉によって苦しむ人は、日本の国民の四割くらいいるという。
杉の木を植えた人を責める人まで現れるほどだ。
けれど、よく考えてみてほしい。
戦後のはげ山状態をもしも当時の人が放置していたら、きっと今頃、日本という国は滅亡していた。
世界地図から日本という国を消さずに、今も残しているのは、杉の木であり、杉の木を植えた人なのだ。

今はその花粉を発する事のない杉の木や、花粉を通常より少ない状態で発する杉の木を植えている。
それらが成長する頃には、もうちょっとマシになっているのではないだろうか。
何かと脱炭素化と言って木も紙もプラも使わなくなってきたけれど、これこそローリングストックを意識しながら運用すべきではないかと思う。

という事で、「英雄」は杉の木である。
私自身、クシャミやら喉の痛みやらで眠れない日々を過ごしているが、だからといって杉の木を責めるつもりはない。
無論、それを植えた人を責めるつもりもない。

杉の木がもし人のように言葉を使って語れるとしたら、今頃、自分達の務めによって人々が安全に暮らせている事を伝えようとしているだろうさ。
土砂崩れが起こるのを防ぐ重要な役割を担うのが、木々だからね。


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