少女症

・少女が大人を嫌悪するように大人も少女を嫌悪する。

・少女は大人になる決心をした。
 理由はもっと広い世界を見て来れるから。
 (後戻りは出来ないと知っていても)

・少女が夜を過ごしている。
 薬のような静けさが小さな狂気の扉を開ける。
 大人が忘れたあの狂気を。

・少女が窓から落っこちた。
 廃墟の窓から落っこちた。
 今も少女はそこにいる。

・いる筈のない少女を追う禁断症状。
 例え柵の向こう側でも追いかけてみせる。
 少女は笑っていた。

・通り雨という化物が少女を隠してどこかにやった。
 それは、今が食べ頃だから。

・少女の幻とは儚いものだ。
 そんな少女は何処にもいないから。
 だが私たちは少女を生んだ。

・少女を描きたい病だと診断された。
 架空の少女ばかり描く奇妙な病。
 現実の少女を描く日はまだ来ない。

・陽炎のようにゆらゆら揺れてどこいくの。
 頭の中の幽霊を呼んだ。
 うつろな少女に名前などない。

・少女の亜種が生まれ続ける。
 元を辿ればひとりの少女に辿り着けるのか。
 だがその時にはもう、少女は大人になっている。

・整列する少女。
 ただの人形と罵られても愛することに変わりない。
 今日は首をすげ替えて宝石の眼を与えよう。

・私たちは少女症。
 腕が取れても足が取れても、痛みを感じることはない。

・痛みを感じるのはこの胸だけだ


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