原っぱのお兄ちゃん

兄がいなかった僕は
いつも心のどこかで
すがる存在を欲していた

ある夏の日
見知らぬ少年が家にやって来た
遊ぼうと僕を誘う少年は
僕よりいくらか年上に見えた
日差し照る原っぱを
夢中でお兄ちゃんの背中を追いかけた
なんだか贈り物をされたみたいだった

ある日を境に
少年はパッタリと
家に来なくなった
誰に聞いても
そんな少年のことは知らなかった
お兄ちゃんは幻だった
夏の日が
僕をひとりで歩いていけるようにと
促した幻だった
以後僕はもう
すがる存在を欲することは
なくなった


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