何も言わないでおくよ

電話越し表情(かお)は見せたくないから
咽ぶ声だけ伝える

正解も間違いもない
知らず知らずいつでも
ひとつの選択肢を進んでいく

タラレバが邪魔な日を
それが生きているんだと思わせて
問いに答えは帰らない
遺したものを手繰り寄せる

記憶は自由に書き換えられるから
抱えた悔いを探さないで
記憶は自由に書き換えられるから
貰った全てを忘れないで

君を撫でるのはこれが最後
受け止めるから送ろう
君が辿り着く場所を知っている
その景色は知らないけれど
そこにいる人を知っている

私は何処に行こうか
私はまだ此処にいて
吐き散らかす毒も瓦斯も
此処でやっていく証

掛けたい言葉は多すぎるから
今は何も言わないでおくよ
この手は伸ばさずに
静かに花を手向けていくよ

またいつか
道を鎖す季節に
君を思い出すだろう

まだ白い息で
此処で思い出すだろう

今年 雪は降り始めたばかり


コメント

  1. 死んだ猫に捧げた詩です。