他愛ない夢の名前を憶えている
愛されることのない光を
遠くで見つめていた
歩けば歩くほど
現実感を失って眩暈がする
小さな欲の芽は君が笑えば
すぐに埋められ道となるけど
安息の白い部屋は蛻の殻で
水銀の血だけが飛び散っていて
腐食する筈だった夢の亡骸に
微かに残る体温が哀しい
起動するもうひとつの世界
さらさら雨が降る中始まる
夢ヶ淵へ行くための
銘酒を注ぐ杯は鍍金の贋物
代わりに螺鈿を施し与えた
黒く染めても闇に艶めく
鎧のような水牢は
私の代わりに怪物を捕えて
罰してくれるから
他愛ない夢の名前を忘れないでいて
コメント
どうせそれは悪夢だから。