人魚姫

__人魚姫は泡になって消えてしまいました__

子供のころ、
大好きだった絵本。

あのころは、
こんな悲しく美しく切ないお話だって
きずかなかった。

いや、知らなかっただけかもしれない。
この感情に、

しかも、
どこか自分と似ているところもあって、

それがよけい悲しくなった。

『俺、彼女出来た!』

やっぱり、
海の中で見ていた方が幸せだった。
何も知らなくて
済んだのだから。

でも耐え切れなくなったから
頑張って、ここまで来て、

やっとやっと声が
だせるようになったのにな…

『そっか、良かったね』

なんであんなこと言ったんだろ。

そんなこと言ったらもう二度と
君となんかしゃべれなくなっちゃうのに、

人魚姫もどうして泡になったの?

ゆっくりと目を閉じると、
君の笑顔が浮かんでくる。

初めて会った時よりも、
一緒に喋れるようになった時よりも、

楽しそうでうれしそうで
幸せそうで、

初めて見た、
君の本当の笑顔。

絶対にあたしでは無理なこと。

人魚姫はきっと、
自分より王子様の幸せを願ったんだ。

だから、泡になったんだ。

だったらあたしも泡になる。

君には君の愛した人と
ずっとずっと幸せになってほしいから。

あたしと過ごす時間よりも、
もっと美しく素敵な
時間を過ごせると思うから、

絶対に邪魔なんかしないし、
恨んだり悔んだりも絶対にしないから…

ちゃんとちゃんと泡になるから、

あと少しだけ君の事、愛させてください。


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