バンドマンの心臓

ぼくはきみの不規則正しい心音でありたい。
あの、ライヴのあとの喪失感が好きだ。
野口と福澤が家出したって事実に、
内臓を炙る感覚がしてもうすぐ死ぬのかもって。
三半規管がどうかしている。
耳の奥で、ぐるり、ぬおん、そんな音はしないけれど。
聴こえた気がする20時30分、終電はまだまだ先だ。

今も思う、きみが歌うたいでよかったって。
イヤフォンの中の偽物に今日も拍手を贈ってあげよう。
真新しいティーシャツはもうすっかりライヴハウスの香りだ。

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重低音が内臓にずしりと来るのが、ぼくには身体があるよって教えてくれる。
人に野蛮ねって言われても、いいんだ。
あの時間、あの空間の一部であったぼくに、怖いものは何もない。


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