【夜に光る苔】


夜に川を渡る水音
風を切った矢になり
胸に刺さる
言葉もなしに

海に沈んだ太陽の光を吸って
夜ごとに光る呪われた苔を窺う

光る苔を盗む者は許さない
たとえ知らず苔に触れた人でさえ

愛を水に変える虚白
声をらし叫ぶ恋人
すでに愛は
指を離れた

まどろみながら傷ついた体をさする
鬼火のような燐光が瞼にこがれる

暗い窓に苔盗人こけぬすびとが映った
青いガラス破って弾丸たまを放った

誘蛾灯になった苔たち
銃の叫び森を震わす
その人の死体は

あしもと


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