昔の小説家は
貧困と病気と女の三点セットで
書く素材があった
それがないと文学的でないような
いまのわたしの生活は貧困よりない
健康でいて女けもない
金持ちで病気とは無縁 女にも不自由しない
そんな人にいい小説が書けるのか
そう古い文学者たちは考えた
満たされているものからは何も出てこないと
いまはどうだ
見渡せば不自由ばかり
中流も下流に落ちて
街歩く人は苦渋にしかめ
幸福とは縁遠い顔ばかり
病院には病人の列
シングルばかりで結婚なんか考えもない
そうして三点セットが揃っても
小説だと?
そんなもの書く暇もないし読む気もしない
本も読まないで
何? 文学的だと?
いまは文学ほど喰えないものはない
それで生きられるのか
物書きは女に捨てられ貧困のどん底で
病気になって横たわる
本が売れない喰えない
実に文学的というのは飢餓なのだ

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