ノート

絵の具で描いたような街
ビルの外壁に手をついたら
乾いてなかった絵の具が
水彩のように手についた

驚いていると 豪雨が降り出した
雨は街の色を全て洗い流していった

街は黒い線と白い下地だけなる
そう早合点していたときだった

絵の具の下に隠れていたやつらがいた
それは悪魔たちだった

人がたくさん集まる場所で
暴力や淫猥や蔑みが 長い間 燻ると
それは悪魔になると誰かが言っていた

悪魔は僕を一瞥すると
服を剥ぎ取られた淑女のように
女走りで逃げていった

僕は自分の顔に
何かすごいものが付いていて
それで悪魔は逃げたと思って
僕は鏡を探す

真っ白な世界 足が棒になるまで歩く
自分のことをまるで
ノートにこぼれた一雫のインクだと
そう思ったときだった

びりびりと音がして
彼方に見えていた地平線は
くしゃくしゃになって
僕の方にすごい速さで迫ってきた

僕はしくしくとすすり泣いた
自分が紙の世界に生きていて
それは捨てられつつあって
知りたいことは何も分からないこと

僕がその膨大な哀しみを全て
涙に変えるまでの時間
事態はそれを待ちきれなかった

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