私の家のすぐ近く
藤の花咲く家があった
毎年5月になる頃に
まるで塀を囲むかのように
見事な藤が咲き誇る
小さな古い家だった
そしてその少し向こうには
ススキが育つ家があった
毎年秋になる頃に
古い家の敷地の角に
群生するススキが見られた
私の背丈と同じくらい
それは見事なススキだった
一昨年のこと
春には藤
秋にはススキ
どちらもスマホのアルバムに収めた
誰も知らない宝物を
手に入れた子供の気分だった
そして月日は流れ
次の春
藤が咲くあの家に
売家の看板が立てられた
気づけば藤は伐採されて
瑞々しさ残る切り株になっていた
そして秋
ススキの群生する家は
取り壊されて更地になり
土地は全部均されていた
藤の花の咲く家には
もう主もおらず花も咲かない
ススキが群生する家は
その後新しい家に建て替えられたが
ススキが群生していたあの場所に
ススキは二度と生えなくなった
ただそれだけのことなのに
何だかとても悲しかった
毎年人知れず楽しみにしていた
藤の花とススキの群生
もう二度とそこに咲くことはない
その見事な藤とススキは
私のスマホのアルバムの中に
今もそっと存在している

コメント
私も読んでいて切なくなりました。
私の実家の近所も緑豊かな土地だったのに
今では工業団地へと姿を変えつつあります。
時と共に風景は変わってしまいますが
だからこそ記憶の中で大切に留めておきたいですね。
アキさん
いつもありがとうございます(*^_^*)
アキさんのお住まいのところも、工業団地に変わっていくなかで緑が少なくなってきているんですね。
全国的にそういうところが多いのかも知れませんが、何だか寂しくなりますね。
都市開発が進んで拓けて便利になるのもいいですけど、生まれ育ってからずっと見てきた緑がなくなってくるのは本当に寂しいものですね。
私が毎年藤の花やススキを楽しみにしていたお宅は、どちらもかなり古い家でした。
片方は空き家になり、片方は家が建て替えられて、その前を通る度に何だか物悲しい気持ちになります。
みんなそれぞれに事情があるから仕方のないことなのですが…。
でも、藤の花もススキも、毎年命を輝かせていたことを思うと、それがとっても悲しいです。
湖湖さん
いつもありがとうございます(*^_^*)
…そうなんです、私もとても悲しかったんですよ。
私は今の賃貸に引っ越してきて6年経ちましたが、引っ越してきた当初から、毎年あの古い2つの家の敷地に、それぞれ藤の花が咲くのとススキが群生するのを見るのが密かな楽しみだったんですよ。
どちらも本当に見事でした。
藤の花は恐らく当時住んでいた方が手入れをしていたのではないかと思います。
ススキは恐らく手入れは特にされておらず、自然に生えてきたものだと思いますが、本当に見事だったんですよ。まるで人間みたいに見えました。
それにしても不思議ですね。
どちらも何となく写真に撮ったんです。
その半年後くらいに伐採されたり掘り起こされたりしたんですね。
湖湖さんの言われるように、人も植物もいつかはその命を終えるものですが、私が毎年親しみを持って眺めていたことが、あの藤の花やススキに伝わっていたなら嬉しいです。
願わくば同じ場所に、藤やススキでなかったとしても新しい花が咲いて、その花を愛でられますように…。
春原 圭さん
いつもありがとうございます(*^_^*)
暖かい御言葉に、何だか目頭が熱くなります。
藤の花の咲く家も、ススキが群生する家も、ちょうど私がスーパーに行く時に通る道にあるんですよね。
毎年まずは春になると、藤の花の咲くのが楽しみで、咲いたらわざと花の近くを通ってあのさりげなく甘い香りを楽しんでました。
秋になれば、ススキの群生する家の横を通り過ぎるときに、突然死角から視覚的に入ってくる背の高いススキの群生に、毎年のことながらまずはギョッとして立ち止まり、その後「あぁ今年もこんなに元気に育ったんだ」としばし見入る私でした。
…そうですね、願わくば、切り株になってしまった藤の花の根元のあたりから、また新たな花木が育ってくれることを願いたいです。
そして建て替えの際に更地にする時に掘り起こされたあの場所から、もう一度ススキが育ってくれたらと、心の何処かで期待してしまう私です。
知らないお宅の植物のことなのに、何だか本当に悲しい出来事でした。
切なくて感動しました。人も存在も滅びるものです。悼むのは愛の価値ですね。