お茶会 8

(双口スープ皿の謎と恐怖)
部屋中の空気が双口の黒い皿を中心に渦を巻いている様に
海風 薫以外の部屋に居る人間の視線が皿へと
引き付けられるなかで海風は双口スープ皿に付いている
説明書を読むが如く淡々と呪いを成立させるべき条件を話し始めた。
「その条件とは、飲み物の中に相手が嫌いな物を入れる事。
飲んでいる間は相手が、どんな状況に成ろうとも目を逸らさない事。
そして最後に一番大事な事は相手への憎悪を持ち続ける事だったはず。
言うまでも無いですが、現場に二人以外の動物が居ると呪いは成立しない。」と
説明書を閉じる様に海風は言い終わった。
今一、理解が追い付いていない様子の紅葉ちゃんの横からアキさんが
「好きな物じゃ駄目なの、嫌いな物にする必要が有るの?
目を逸らさないって条件にする必要が有るの?
憎悪の持続って殺したいと思う程なら普通に出来そうだけど?
意外と条件のハードルが低いのね。
それと二人以外の動物って人間以外でも駄目って事なの?」
フンと鼻こそ鳴らさなかったが薫さんが
予想通りの質問を有難うと言わんばかりに話し始めた。
「出来そうな事が意外と難しく、
入り易い入口ほど出るのに苦労するものなのだよ。」と
謎の発言をしたが、言った本人が思う程には
皆の心を掴めていない様だった。
現に私も早く条件クリアに付いての話しを聞かせて欲しいと
思っていたから、突っ込まずに黙って待っていた。
自ら発動させたとは言え皿とは違う呪術によって重苦しい空気が
流れる部屋の中で海風 薫は皿の呪術を成立させる条件が
何故に難しいのかを話す事となった。
「一つ目の条件だが、好きな物を飲ませるのは簡単だけれど、
嫌いな物を飲んで貰うには少し親しい程度では無理がある。
それなりの人間関係が必要なのかもしれないね。
二つ目の条件だが、相手に殺意を悟られずに目線を外す事なく
スープを飲み終えるって結構ハードな事なのだよ。
それを冷静かつ簡単に行える人は呪物に頼らないと思うけどね。
三つ目の条件だけど憎悪の持続って意外と難しいのだよ。
相手に殺意を悟られずに相手と向き合って嫌いな飲み物を
飲ませないと駄目なので、好意を持っている演技をしながら
憎悪を持続しないといけないサイコパスな状況に耐えられる
精神状態が必要とされる。
簡単そうに聞こえる条件でも、いざ行動に移すと難しいんだよ。」
薫さんの言葉に皆が頷く。
「その条件をクリアしたら必ず相手は死ぬのですか?」と
頭に浮かんだ言葉を私は投げ掛けていた。
その言葉に少し間を置いてから薫さんが
「恵子さんは【人を呪わば穴二つ】と言う言葉を知っていますか?
この皿で相手が死んだ事を確認した時、自分の命も絶えるのです。
ですから、呪いが成功した事を伝える人は居ません。」
それを聞いてアキさんが
「だったら飲み物に毒を入れて飲んだ方が早いんじゃないの?」と
怖い発言を普通にして来た。
「確かに、毒を飲ませる方が確実ですが、
皿を使う意味は殺す事以外にも有るのです。
皿を使うと相手が苦しみ死んで行くのを
最後まで見届けられるのです。その死に様は…」
呪う相手の死に方を薫さんが話すのではと察して、
たまらずアキさんが紅葉ちゃんを引き寄せて
「ちょっと待って紅葉ちゃんには刺激が強すぎるから部屋を出る。」と
言って二人で部屋を出て行った。
二人が出てゆくのを確認して薫さんが
「相手の死に方は想像を絶するもので、
文献によると呪いをかけた相手に助けを求めるのでなく
早く殺して欲しいと懇願する程に苦しむらしい、
そんな相手の死に方を息絶えるまで見て呪った方も
ショックで死ぬとも自分が行った残酷な行為に耐えられず
命を絶つとも伝わっています。」
堪えきれずに息を吐きながら七海さんが
「そんな恐ろしい皿なのですか?
この皿が本物だとしたらの話しですがね。」
私も呼吸を忘れていたが「傍に居ても大丈夫なのですか?
呪いとかにかからないですよね?
何だか皿の色の黒さが怖く見えて来ました。」と
皿から距離を取りながら話した。
「本物だとしても使わなければ影響は無いはずです。
触らぬ神に祟り無しとも言いますからね。」と
薫さんが空気を和ませるように笑顔で言うけれど、
部屋の重い空気は変わらなかった。
そこへ紅葉ちゃんを別室へと移したアキさんが戻って来た。
「紅葉ちゃんが居る時は言葉に気を付けてくれないと困る。
トラウマにでも成ったら大変だからね。」の
アキさんの言葉に薫さん以外の大人達も
自分達が心の余裕を失くしていた事に気が付いた。
「イヤイヤ、本当に配慮が足りなかったです。
珍しい皿を手に入れて見せたい気持ちが先に立って、
子供の紅葉ちゃんの事へ気が回らなかった。本当に申し訳ない。」の
七海さんの言葉で今日のお茶会は終わりかなと言う雰囲気になり
皿が本物か偽物かを確かめようと言い出す人も無く、
怪談話しを聞き終わった後の緊張からの解放感の中で
「でも、この皿がそんなに恐ろしい皿だなんてね~
形は変わっているけど奇麗なお皿じゃないのよ~」と
アキさんが双口の皿に手を伸ばした時
「触るな!アキ」と薫さんが大きな声と共に
皿へと伸ばされるアキさん手を払った。

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