魔法使いさん。
あたしにはもう、
綺麗なドレスもガラスの靴も必要ありません。
かぼちゃの馬車もいらないです。
もう必要のないものだから。
いつからだろう、
運命や奇跡を信じ始めたのは、
シンデレラみたいに毎日神様に祈るようになったのは、
『いつかこの思いが届きますよう』って
いつから、思い続けたのだろうか。
夢の中で、
何度思い描いたのだろうか。
なんで、あたしは
今までそれにすがってきたのだろうか。
気づいたの。
遅すぎるかもしれないけど、
そんなの必要ないって。
ガラスの靴なんかなくても、
自分の存在は伝えることができるから。
この思いは自分だけにしかわからないから。
代用なんていらない。
走らなくちゃ!
誰もいない道を全力で走った。
『お願いまだいかないで!』
心の中で何度も何度も叫んだ。
きっとかぼちゃの馬車ならすぐに行けるのだろう。
でもそんなんじゃ意味ない!
自分の足で、
自分の声で、
全部自分で、伝えるんだ!
走って走ってようやく追いついた。
あたしを見たあなたはびっくりしていた。
「どうしたの?」
少し焦った声であなたは言う。
海みたいに美しくて、
世界中のだれよりも幸せになってほしくて、
世界で一番愛しているあなたへ、
「一度しか言わないからよく聞いてね」
もう、後戻りはできない。
「愛してます」
12時の鐘は鳴り終わった。
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